ビケちゃん
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“四方田千砂”という、今回のミサが依代とした少女の名は、私がかつて語った物語「Alice 6」、或いは「serial experiments lain」などにも登場したものであり、それぞれの千砂は独立した存在ながらもどこかに共通項があって、私が無意識にその名を再び用いる事になったのは、この物語の大枠が浮かび始めた時だった。
ミサにウサギのぬいぐるみを持たせようと思いついた時、それは前シリーズで、魔術道具を昔の医者が持っていた鞄に詰めて持たせる、という私自身の思いつきを、新たなシリーズでは踏襲したくなかったところから始まったのだった。
“ビケちゃん”というぬいぐるみの名は、「lain」にも登場していたが、最初にその名を呼んだのは「魔法使いTai!」の小説版だった筈である。
“ビケちゃん”は、魔法使いTai!の伊藤郁子さんにデザインして貰わなくてはならない存在だった。
ウサギにしたのは、伊藤さんがウサギマニアだったからに他ならない。
伊藤さんは数多くのラフを描いてくれたが、私や服部監督が「これしかない」と考えた、最初の一枚が実際に立体化された。
ネコ目のウサギは、黒と赤というGothな配色を得て、ぬいぐるみを持つには似合わない、かと言って大人びた格好も似合わない、まさに曖昧な少女、四方田千砂を依代として蘇った今回の黒井ミサに相応しい伴侶であったと思っている。
企画初期には、このビケがミサの魔術によって人格を得、魔女の使い魔として機能するというアイデアも持っていたが、物語が発酵するにつれ、その発想はオミットした。