突出する松果体の表現
9話で、額から松果体が突出するというシーンをシナリオで書いた。
本シリーズの様な深夜帯のシリーズである場合、当初からそれが売りでない限りは、特殊メイク効果は予算的に無理なものである。

しかし、どうしても物語上そうした表現が欲しいと思った時、私はノーギャラ、材料費持ち出しで自ら造形を始める。
こうした姿勢は、プロフェッショナルとしては許されざるものかもしれないが、自主制作映画を作る事から今の世界で表現をする私にとって、これが一番自分に素直な事なのだ。

しかし、「学校の怪談/妖怪テケテケ」以来とも言えるこうした作業は実に10年近いブランクがあり、コストはさておき、かなりの無駄な手間を重ねてしまった。
当初から、立体造形するのはごく一部のみで、編集時に人体と合成する計画だったので、実際に造形したのは極く限られた部分のみ。先ずは松果体の発光ギミックと、額のダミー部を造形した。
発泡スチロールの土台に水粘土を盛りつけ、女性の額のカーヴを意識しつつ額を造形。
突出する傷口も予め造形しておく。合成時に、この部分は消して貰う。
突出する松果体は、一応粘土原型も起こしていた。「バジリスクの蛇」をイメージした、“目の無い蛇”というコンセプト。
石膏で型取りし、無着色の半透明ラテックスで皮を作成し、上の発光ギミックのロッドに被せ――というプランだったが、どうせ突出するわずか数フレームのみであり、何度か突出させるだけの強度が必要と考えて、この皮は未使用とした。
これが出来上がり。
粘土で原型を起こした額部は、「人肌のゲル」という新素材で成形。周縁部はカーボン・ファイバーで裏打ちし金具を固定して、しっかり保持出来る様にしてある。

作業は、最終話の初稿を上げた2003年の年末から開始し、2004年1月の正月明けまでかかった。