そういう今の私のところに、1/6サイズの人間のデータが送られてきた。
 正確には、自分ではそうと知らずに入手をしたものだが、どうしてもそれが、私にある意図をもって送られてきたのだという、莫迦げた考えを拭うことが出来なかった。
 だから私は再び、データの入っていたパーツを売っていた店へ再度訪れたのだ。
 今はもう、その答えを知っている者は誰もいない。

 人形を作る――。それはそれで、大変な技術と修練が要るものだ。
 しかし、あまり気負いなく取り組む気になれたのは、彫塑という創造行為に親しみがあったからだ。
 私は小学生の時から、8mmフィルムで特撮自主映画を作っていたが、大学になった頃はホラー映画を作るのに傾倒し、その頃クローズアップされ始めた特殊メイクアップという技術を、洋雑誌などの少ない情報をもとに見よう見まねで会得しようと試行錯誤していた。
 学校を出て、プラプラと映像演出の仕事を始めた頃には、いくつかの商業作品で、特殊メイク/特殊造形を担当してもいる。
 特殊メイクアップという技術は、俳優の顔に人の肌に近い質感の発泡ラバー製パーツを貼って、怪物などをフィルムの中に現出させるというもの。
 このパーツを作るには、粘土による造形、型どり、注型による複製――、つまり、ガレージキット・メーカーがする事と極めて似た工程をとるのだ。
 私が作っていたのは、もっぱら醜い姿のマスクや、モデルアニメ用の怪物などで、“美しい”ものは作った事がない。しかし、造形の勘所というのは未だ憶えている筈だ。

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