散らかった部屋を無言で片づけ、コーヒーを淹れてやっとデスク前のアーロンチェアに腰を下ろした。
彼女は既に、机の上の灰皿に腰掛け、美しい形の脚を組んで私を見上げていた。
砂糖を二匙入れた甘いコーヒーをすすって、私は彼女に声をかけた。
「待たせてしまったみたいだね」
２９センチの女は、目を落とし、幾度か瞬きをしてポツリとか細い声を上げた。
「――私は待っているだけなの。いつだって――、どこだって――」
そして私は、彼女が語り出す言葉に全感覚を集中して聞き始めた。
Back to Malice Top