Updated at 97/09/12

『ウルトラマンティガ』に関して、メールなどでよく受ける質問の内、今お答えして差し支えなさそうなものを挙げてみました。

私がシナリオを担当したのは下記の通り。

03『悪魔の預言』(キリエル人/キリエロイド)
05『怪獣が出てきた日』(シーリザー)
06『セカンド・コンタクト』(ガゾート/クリッター)
09『怪獣を待つ少女』(マキーナ)
19『GUTSよ宙へ・前編』(ゴブニュ/ゴブニュ・ヴァハ/ゴブニュ・ギガ)
20『GUTSよ宙へ・後編』(ゴブニュ・オグマ)
25『悪魔の審判』(キリエル人/キリエロイドII)
34『南の涯てまで』(デシモニア)
35『眠りの乙女』(デシモニア/デシモ星系人/グワーム)
43『地の鮫』(ゲオザーク)
44『影を継ぐもの』(イーヴィル・ティガ/ガーディー)
50『もっと高く! Take Me Higher!』(ゾイガー)
51『暗黒の支配者』(ゾイガー/ガタノゾーア)
52『輝けるものたちへ』(ゾイガー/ガタノゾーア)
  (51,52は右田昌万氏、長谷川圭一氏との共同脚本)


――三話『悪魔の預言』は決定稿と違うところが多いそうですが?

このシナリオは2日でゼロから書き上げる事を余儀なくされたものでした。シリーズ開始当初という事もあり、監督やスタッフとも未だ世界観やティガ像が固まっていなかった為にかなり激しい議論も交わされました。決定稿が出た後も幾度か差し込みを書きました。この差し込み部分でキリエル人のニュアンスが決定されたと言ってもいいでしょう。完全なる決定稿は存在しません。この作品に限らず、決定稿として印刷された台本が完全な決定稿である事の方が希です。


――五話『怪獣が出てきた日』のエピローグ、ムナカタは酒が飲めなかったというオチはシナリオにはないそうですが?

ありません。川崎監督の演出は、私が狙っていたオフビートなブラック・ユーモアよりも、もっと判りやすい笑いに振ったものになっており、あのラストはとって付けた様なものではなく全体の演出プランから生まれたものだと了解しています。放送時、私も笑ってしまったので。
準備稿までは、先の大戦時に生前のシーリザーに砲撃した海軍将校を、通信社記者のオノダが取材するというシークェンスがありました。尺の都合でカットしたのですが今でも惜しいと思っています。


――ガゾートとガゾート2は何か違うんですか?

ガゾート2が登場する『幻の疾走』は私の担当ではないんですが、一応お答えしときますと、口の中など細かい改修がされたと聞いています。


――六話『セカンド・コンタクト』にダイゴが殆ど登場しないのは何故ですか。

長野氏のスケジュールの都合でした。


――クリッターは本当にいるんですか?

知りません(苦笑)。いるかもしれないし、ただのヨタかもしれません。『ティガ』のクリッターは、民間伝承の空中棲息生物とはかなりイメージが違い、オリジナルのものだと捉えて欲しいです。


――怪獣の名前はどうやってつけるのですか?

ケース・バイ・ケースですが、私の場合はその怪獣の発想の根元から引いてくる事が多いです。ただし、版権がとれるかどうかという大きな問題があり、そのまま通る事もあれば改変を余儀なくされる事もありました。
私が書いた怪獣の名前とそのオリジンを記します。


キリエル人……キリエル(悪魔の名前)
シーリザー……Sea Lizard(海の蜥蜴)
ガゾート……Azort (錬金術用語)
マキーナ……デウス・エクス・マキーナ(ギリシャ悲劇の最後に登場する機械神)
ゴブニュ……ケルト神話の鍛冶神
デシモニア……?(何だったか失念)
グワーム……ワーム(ドラゴンの元型)
ゲオザーク……地の鮫(まんまや)
ガーディー……Guardian(守護するもの) 本当はクー・シーにしたかったんですが、版権がとれませんでした。クー・シーは犬魔神の名です。
ゾイガー、ガタノゾーア……クトゥルー邪神からアレンジ

――『ティガ』は『ウルトラセブン』を目指しているのですか?

私個人は、セブンが好きなのは事実ですが、『ティガ』はこの'90年代末に相応しい、新しいウルトラマンを創りだそうと頑張ってきました。よく言われる“セブン・コンプレックス”なんてものはありません。

――『ウルトラマングレート』のデガンジャの様に、今回も怪獣のデザインをご自分で描きましたか?

いいえ、今回は全くやっていません。

――『眠りの乙女』は、改変された『ウルトラマングレート/第47格納庫事件』のリメイクですか?

冷凍保存されたエイリアンを巡る話という部分では似ていますが、全く異なるストーリーです。『眠りの乙女』の初稿では、グワームは埋まっているのでなく、巨大な棺桶でTPC本部めがけ落ちてくるという設定でした。軌道修正を必死に図るサスペンスがあったのですが、諸事情でオミットされました。

――ティガ・アクションデザイナーが見つからないのですが?

(^_^;)……。私は西新宿のT-ZONEで購入しましたが……。

――『地の鮫』『影を継ぐもの』に登場するマサキは、京本政樹氏が予定されていたのですか?

いいえ。プロット初期の頃(『南の涯てまで』や『拝啓ウルトラマン様』よりも前にプロットは出来ていました)に、V6のメンバーを招くという案が出た事はありました。“マサキ”は“柾”と漢字では書きます。

――『地の鮫』の“トンカラリン遺跡”は実在のものですか?

そうです。本篇でホリイ、シンジョウを案内していたのは、実際の所在地の町役場職員の方でした。

――『もっと高く! Take Me Higher!』の予告にあって、本篇には無かった台詞がありましたが?

「あたしダイゴがティガって知ってる――」というレナの台詞は元々シナリオには無く、ストーリーを見て貰えればお判りかと思いますが、そういう台詞を言わせない事がキモのシナリオでした。あの予告のショットは、レナとダイゴの芝居を作り上げる為にセットで撮影されたエクストラ・カットだったのですが、予告を編集している勝賀瀬チーフ助監督が陽の目を見せたのでした。

――『もっと高く! Take Me Higher!』ラストの草原シーン、レナが何かを呟いていますが、何と言ってるのですか?

あのシーンに台詞としては「おかえり」「ただいま」以外は書いていません。唇を見ると大体判りますが、私が言うのはヤボというものでしょう。

――『もっと高く! Take Me Higher!』に登場したスノーホワイトとは、マキシマ・オーバードライブテスト機とは違うものですか?

同じものです。いつまでも名前が無いのが不憫で勝手につけてしまいました(すいません>講談社方面)。ブルー・トルネードとクリムゾン・ドラゴンはバンダイがデザイン、名称設定をしたものでしたが、いずれも色の名がついていたので、それに準じた訳です。白というよりは銀に近いんですけど、『GUTSよ宙へ!』にてレナの為に作ったマシンでしたから、ホワイトというイメージが合うと思ったのです。“スノー・ホワイト”は『白雪姫』の英題です。まあダイゴもシンジョウもその後あれに乗ってるんですけどね。

――FAQって何ですか?

Frequently Asked Questions「よくある質問」の略です。

――最終話は三人の連名ですが、どういう形でシナリオは作られたのですか?

最終話を三人合作の前後編で、というシフトは1997年早々に笈田プロデューサーが発案しました。笈田プロデューサーを含め四人でのミーティングが重ねられました。その討議の為に、小中が超古代文明史とTPC/GUTS成立年史(案)レジュメを作成。これには“ティガにおける光とは”という提起も含まれていました(この年表を受けて出来たストーリーが『南の涯てまで』)。
笈田、小中、右田、長谷川いずれも近い考えを抱いており、ラストのイメージに関しては早い時期にすぐ意見の一致を見ました。そしてそれを補う様々なアイデアが出ました。その中の一つが右田氏によるギジェラと、地球を見捨てた古代文明人の設定であり、光と闇への言及は長谷川氏の挿話で強調され、『影を継ぐもの』も最終話を見据えて構成しています。

最終二話は、私が先ず書いたハコ(シーン割り含めたプロット)を元に、ドルファー202内部のホリイ+シンジョウのシークェンスは長谷川氏が執筆しました。“心の闇と光”への言及は、『闇にさようなら』のシナリオに感銘を受けた私がこのシーンで再度語る事を頼みました。
右田氏は、「全部棄てるつもりで」と謙遜しながら前後編フルに書き上げました。ハヤテとキリノの接触シーンなど、幾つものアイデアは右田稿に依ります。

それらをまとめてシナリオ化し、監督、特技監督、プロデューサー連との調整、改稿(実はここらの作業が最もヘヴィ)を小中が担当しました。

――最終話に、村石監督から差し込み(追加台本)を要請されたそうですが、どのシーンですか?

51話アートデッセイ・ブリッジのシーンに台詞を追加しました(結果的に追加分はかなり短く使われています)。
52話のラスト、ブリッジのサワイやハヤテのダイアローグも、やはり監督の要請で書き加えています。甲板でのエンド・テーマバックのくだりは監督の創案です(お見事でした)。

――最終章にクトゥルー邪神的な怪獣を出したのは何故でしょう。ウルトラ世界とは異質だと思うのですが?

確かにそうですが、かのゴジラだってキングコングと戦ったではありませんか。
それは半ば冗談ですが――、
最終回に相応しい強大な敵とはどんなものかを、最終章のライター・チームで語り合う内に、単に強い怪獣ではダメだと、底知れぬ怖さが必要だという見解に達しました。また、日本ばかりが危機に陥るのでなく、これは人類全体が新しい時代に入ろうという時に訪れる災厄です。これまでとは闘いの舞台も変えたかった。都市破壊ばかりが怪獣物のカタルシスでは無い筈です。それが、太平洋上というアイデアになっていきます。
こうしていくと、どうしてもクトゥルーを想起せずにはいられません。ならばそのイメージをもとり込んで、これまでとは全く違うタイプの大怪獣を作ってみようと試みたのです。

――ゴルザ、メルバ、ガルラ、ゾイガー、ギジェラ等、“超古代怪獣”と冠せられている怪獣には何か関係性があるのでしょうか。ガタノゾーアが生んだものでしょうか?

はっきりとは私自身も判りませんが、少なくともゴルザとメルバはティガの石像を破壊する“意思”を持っていました。そして他の怪獣も、人間の築いた都市を破壊しようというベクトルを持っていた様です。
“超古代怪獣”の体表は、化石の様に孔が空いているという共通した特質を有してもいました。ガタノゾーアはその特徴の権化の様な姿です。
ゾイガーは明確にガタノゾーアの眷属という存在ですが、他の怪獣達も関係はあるのかもしれません。個人的には、シルバゴン、ゴルドラス等も仲間である気がします。
『眠りの乙女』でイルマが抱いていた漠然とした不安は、それを示唆していた様です。
まるでひと事の様な書き方になってますが、ここら辺の事というのはライター・チームでも文字どおり“想像”する範疇だったのです。各話の担当監督によってはまた違う考え(違う想像)だったかもしれませんから。

――何か書き残したという思いはありますか。

シンジョウ隊員を立てた回を一度は書きたかったですね。
あとまあ、『GUTSよ宙へ!』以降は、縦のストーリーラインを担当していたので、『怪獣が出てきた日』の様なストレートな怪獣物をやれなかったのが残念ではありました。『地の鮫』のゲオザークを、最初からロボットではなく怪獣として登場させたのは、そんなあがきもあったのでした。


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