半年前には一万円を切っていたものが、今は三万円にもなっている。
 PC用メモリの値段ほど相場が変動する商品はないだろう。
 傍目で見る分には、「へえ」と思うだけだが、仕事で使っているマシンがクラッシュし、新たにPCを組まなければならなくなった今の私には、切実な問題となっていた。
 店舗の数では秋葉原の比ではないが、電脳関係の買い物をするのに西新宿は最適な町になっている。物によっては秋葉原よりも安く買うことも可能だ。
 大型量販店の他に、雑居ビルの一フロアといった小さな店舗があちこちにあって、欲しいパーツは大体揃えることが出来た。
 確か――、ここは以前、アメトイを売っていた店が入っていた筈だけど……。
 小さな張り紙だけがビルの入り口に貼られている、新しく出来ていたジャンク・パーツの店に入ってみた。
 今の電脳社会は、台湾のテクノロジーと労働力に支えられていると言っていい。メインどころのマザーボードは殆どが台湾製だ。
 半導体のチップそのものは、日本製も健闘している印象。
 有名メーカーのものは、その店には少なかった。殆ど聞いたことも無いメーカーの、用途も不明なパーツが整理というものを全くされず、ただ床を覆う段ボール群に突っ込まれていた。
「これ、なんですか?」

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TEXT and Digital Imaging:小中千昭
Illustration: 西岡 忍

AX誌2000年連載
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