不思議なパーツを見つけた私は、店員に訊ねた。
「メモリ」
 店員は日本人ではなかった。詳しいことは判らないという。
 しかし、これがメモリ?
 確かに端子は、DIMMのソケットと同じだった。しかし半導体があるべきそこには、そう、喩えて言えば、消火器。そのミニチュアの様な赤いボトルが載っていたのだ。およそPCのパーツには見えなかった。
「これ、PC用? 何メガバイト?」
 店員は指を二本立てた。
「2? 256MB?」
 店員はニヤっと笑って英語で答えた。
「2ギガバイト」

 私がそれを買ったのは、そのスペックを鵜呑みにしたからでは勿論ない。ネットの友人達にいい話の種が出来たと思ったからだ。冗談で買うにはやや高い額ではあったが。
 勿論使うつもりはなかった。こんなものを挿して、CPUを駄目にしてしまうのは莫迦らしい。
 しかし、仕事場に持ち帰り、しげしげとそのパーツを見てみると、不思議なことに気がついた。
 赤い消火器の様なボトルの端から基盤にはコードが配線されていた。赤いボトルの下側に、本来の半導体が埋められている。しかし、ではこのボトルは――。
 通電するかどうかを確かめようとテスターを繋いでみると、針が跳ね上がった。