そうか――。
 この赤いボトルはバッテリなのだ。もしこれが本当にメモリだとするなら、普通なら電源を切ってしまうと消滅してしまうメモリの内容をそのまま保持出来る様になっているのだろう。
 PCではなく、私の知らない何かの汎用機に用いられているのかもしれない。それにしても2GBの容量があるとは思えないが。
 私は好奇心を抑えられなかった。
 そのメモリチップを、組み立て途中のマシンに挿してみるという誘惑に抗えなかった。
 普通のメモリと並べて、メモリスロットに挿し、マシンを起動させてみる。
 バイオスが立ち上がり、メモリ・カウントが始まった。
 なんだ……。
 プロセッサは、ノーマルのメモリ分しか認識していなかった。当然、かもしれない。そこでやめてみるべきだった。
 今度は、ノーマルのメモリを抜いて、その奇妙なチップのみを載せて起動させた。
 画面は真っ黒なままだった。バイオスすら立ち上がらない。火を噴かない内に早く切ろう。そう思った時――、
 画面に凄まじい勢いで文字が流れていった。
 文字化けしているのか、日本語の様にも見えるが判然としない。私は漠然とした不安を感じ、強制切断しようとスイッチに手を掛けると、僅かな振動を感じた。耳を澄ましてみると、OSを立ち上げようとしないハードディスクに、何かデータが書き込まれているらしい事に気がついた。