西新宿の、あの怪しげなジャンク・パーツ店は、再び行ってみると既に転居した後だった。ものの数週間も開いていなかった事になる。
 その店で、奇妙な半導体パーツを買ったのは偶然であり、私の気まぐれ。その筈だが、私には、何かの因縁めいたものが感じられてならなかった。
 見たこともない“メモリ”ボードが、私のハードディスクに書き込んだ、正体不明のデータ。それが、どうやら完璧な容姿の美しい女の姿を数値化したものらしいことまでは判っている。
 問題は、それがノーマルなサイズではなく、1/6という大きさに規定されていること。
 1/6というスケールは、ファッション・ドールの言わば世界共通規格とも言えるサイズなのだ。
 私には趣味らしい趣味がなかったのだが、ここ一年ほど、内外のファッションドールを集めるという、厄介な病に罹患している。
 もともとがコレクター体質ではないので、ヴィンテージ物などには関心がない。単価がそう高くない女児玩具としての、ファッション・ドールが中心。だから、ついつい歯止めがきかず、気がついたら、仕事場にしているマンションの部屋は人形でいっぱいになってしまっている。
 人形を買ったままにしておく事はまずなく、人形服専門ブティック(というのが存在するのだ)の、見事な仕立ての洋服に着替えさせる。これは“着せ替え人形”としてはごく自然な行為だ。
 それだけではなく、ボディを間接可動素体(ホビー店などで市販されている)に交換するというカスタマイズが始まり、更には、彩色されていない植毛ヘッドを自分で加工し、アニメのキャラクター人形を作ったこともある。

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TEXT and Digital Imaging:小中千昭
Illustration: 西岡 忍
Cell Coloring: 金丸ゆう子

AX誌2000年連載
(C)ギャガコミュニケーションズ 創映新社