録音が終わって、製作会社のプロデューサーと食事をしている時に、新しい仕事についてオファーの話があった。
「オール3DCGで、内容は何でもいいんですけど、ホラーっぽいテイストのをやりたいんです」
 デジタル立体の映像表現、その現時点での限界というものを、私はよく知っていた。しかし、使い方さえ誤らなければ、今しか出来ない映像が作れるかもしれない。
 何か原作がある訳ではないというところも、惹かれた点だった。
 監督、そしてキャラクターのデザイナーとして選ばれていた人々は、これまで私が「共闘」してきた仲間だというのも、前向きに捉え得る大きな要因であった。
 しかし――
「そうですね。ちょっと考えてみます」
 そう答えたが、何を書くのかをこの時、私は既に決めていたのだった。それが、この新しい仕事のオファーを受け入れた最大の理由。

 仕事場にしているマンションのドアを開けると、先ず私はコーヒーの支度をしながら執筆用マシンをスタートアップさせる。
 いつもブラインドは閉めており、午後であろうが、部屋は暖色系のライトで暗めに統一されている。目には良くないのかもしれないが、この方が落ち着くのだ。
 メールをチェックし、幾つかのウェブをざっと眺め、そしてワードプロセッサを起動する。

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