デジモンテイマーズ
Early Planning

 

シナリオ作業に入る前に作成した、構成案です。
Version 4.0ですが、Version 1.0からちょっとずつ加筆してきているだけで、大きな変化はありません。
一部で名前や表記が統一されていませんが、そのままにしてあります。

デジモンテイマーズ(仮)

構成案
Version 4.0

小中千昭
Chiaki J. Konaka
2000/09/29

★【タームとしての“デジモンテイマー】

Version 1.0から、「デジモン使い」という表現を私はしてきましたが、これをデジモンテイマーと置き換えています。
ゲーム、或いはマンガでの用法と異なるかもしれませんが、言葉として強い印象があり、タイトルで用いるかどうかは別にしても、この呼称を用いたいと思います。


★【デジモンとは何か】
前シリーズまでの、アニメに於けるデジモンの擬人化的表現は、子ども達に親しまれ、人気を獲得する多大な効果がありました。
しかしその路線のまま作り続けると、そもそもが「戦う」姿へ進化するデジモンの、モンスター性というものが薄れ、戦いそのもにカタルシスが得られにくくなるという両刃の剣といった効果も付帯してしまいました。

この第三シリーズでは、デジモンの在り方を再度見直し、これまでのシリーズの良きところのみを継承していこうという考え方をしたいと思います。
▼デジモンは、人が作り出した<原始的な>プログラムである。
 ▼人工知能モデルの一つであり、デジタルの海<ネットワーク>にのみ存在し得るもの。
 ▼彼らは基本的に、他のデジモンと戦い、倒し、勝つ事のみが最大にして唯一のレゾンデートルであった。
 ――――――ここまでは、アニメ以前の、ゲームのデジタルモンスターの設定に、より立ち戻る考え方です――――
 
 ▼デジモンのネイティヴな属性は上記の通り。しかし、彼ら自身は、戦う事が、相手を傷つけるのだという、“モラル”を持たない。相手デジモンと対峙し、相手に関心を持ち、相手を理解したいと思った時、彼らにとれる唯一のコミュニケーションの手段が、「戦い」であった。
  相手を破壊、というよりはデジタル分解し、自らのデータとして取り込む。そして、更なる進化をしていく――というのが、彼らのネイティヴな生態であった。
  ――これが、このシリーズのベーシックな基本設定です。
 ▼偶発的な事により、リアル・デジモンが現実世界に表れる――。そのデジモンは、自己の“テイマー”との触れあい、そして、本来の機能ではない“進化”――後述するが、このシリーズに於ける進化とは「成長」と同義である――をし、リアル化したデジモンたち同士のコミュニケーションも、最初は戦いだけだったのが、“友だち”としてのそれに変化を遂げていく――。
  ――これが、このシリーズのベーシックな縦軸です。


★【進化とは】
前シリーズまでは、毎回の進化シーンが、水戸黄門の印籠的な象徴となっていました。
しかし、今回のシリーズでは、“進化”という事の意味をより深く捉えたいと思っています。
一度成長期に進化したら、すぐに体力を無くして幼年期に戻る――。それが進化したものと言えるでしょうか。
巨大になってしまったリアル・デジモン。その様な存在が、現代社会の中でどう存在し得るのか。そして、それをどう、“テイマー”は守っていくのか。そういったドラマをきちんと描きたい。
故に、進化シーンを第一話から毎回毎回出すのは不可能になります。
それ以上の、エモーショナルに、より強く印象づけられる様なクライマックスとして、決めどころで進化をさせていきたいと思います。

では毎回の、印籠的なシーンは不可能なのか。
私は、それは新デジヴァイス+カードインのアクション、かけ声や、カード選択する主人公の知恵などで見せていけると考えます。


★【デジヴァイスについて】
後述の通り、「テレビでデジモンをやっている」という描写は、少なくともシリーズ前半には出さず、子ども達の間で、デジモンが大人気であり、カードゲームがとても流行っている――という現状をバックグラウンドにします。
新デジヴァイスは、発売されたばかりくらいの時制とし、主人公は持っていますが、誰しも持っているもの、という様には描きません(現実と乖離しすぎない為に)。
ただ、基本的には、カードもデジヴァイスも、現実の商品、及びそれの遊ばれ方と面白い形にシンクロ出来る様に配慮していきます。

▼劇中に於けるデジヴァイスとカードの使用方法は、例えばギルモンの相手が、極めて脚が早いデジモンであった場合、それに対応出来る様なパラメータを持つファンクション・カードを、タカト自身が判断して選択し、転送、ギルモンのパワーアップ(用語が必要)――というイメージです。
ミサイルなどのハードウェア装着なども盛り上がりそうです。
ただし、他のデジモンの絵柄のカードを転送するというのは、一回くらいに留めたいです。

▼ブルー・カード(仮)
子どもたちの間で流通している、どこからか紛れ込んだ、普通に売っているものではないカード。
これが、ギルモンに不思議な力を与える――。

※デジモンの出自については、Linuxの様なもの、と仮想しています。
デジモンのオリジン自体は、どこかの企業の研究所(パロアルトの様な、ていうかホントはWiZだけど)が生み出した、原始的人工知性である。そのソースコードはオープンされ、GNU的に、世界の各地でそのクローンが生み出され、独自に発展を遂げていた――という感じです。
だから、ブルーカードなど、カード、それに付帯される“プログラム”は、あくまで人の作り出したもので、それがデジモンのリアル化――、デジタルワールドの現実世界への浸食を直接促したものではありません。
この措置は、商品のみで物語を展開させるのが難しい時が来ると思われる時の予防策です。

※現行のカードダス、デジモン・カードと、新デジヴァイス対応のカードの仕様に違いは?

▼主人公のデジヴァイス
ギルモンとタカトの、バトル時のコミュニケーション(また、二人が離れている時なども)は、タカトのデジヴァイスがインターフェイスとなります。
スタート時は、あくまでタカトがギルモンにパワーや、作戦を伝える為のものですが、少しづつ、内的進化をしているギルモンは、その都度その情報をデジヴァイスの方へフィードバックするでしょう。

この意図は、戦いが激化し、ギルモン(の成長期)とタカトの、戦闘モードでの“シンクロ感”を徐々に高めていく為の演出策です。

※タカト仕様のデジヴァイス、というデザインはアリや無しや。マーキング的? ギルモンのデータが潜在しているという見た目のシンボルが欲しい。




【世界観】

リアルタイムの2001年。
歴史的なこの年次にスタートする番組は、この「新世紀」というものに正面から向かって、子どもたちにこの世紀、そして次の世紀に明るい未来を思い描いて貰いたいと思います。

★物語開始時、前シリーズまでのストーリー、人間のキャラクターは、このシリーズでは無関係です。
デジモン達は、子どもたちにとって、現実がそうである様に、馴染みの深い存在です。ただしそれは、字義通り、ネットワーク、ただデジタルのというだけではなく、子どもたちに流通する共通の概念として(ゲーム・パートナーとして)存在しています。

▼カード、玩具、ゲームなどでデジモンというキャラクターは子ども達に深く認知されている。
▼インターネット、PHSなど、子どものネットワークへの関わりはより現実的なものになっている。
★デジモンアドベンチャーというアニメ、雑誌のマンガについては、取り敢えず物語開始時には触れない。
★しかし子どもたちが大好きだった、「1」「02」の人間のキャラクターも、子どもたちには憧れであり、またデジモン使いとしての“師”に当たる存在であり、シリーズがうねりだした頃に、登場させる価値はあると考える。


学校の舞台は新宿西口近くの、半商業地区。
これまでの光が丘、お台場に続いて、しっかりした画面内リアリティを持たせます。

そして、このシリーズでは、デジモンという存在は現実世界とイコールに認識されています。
つまり――、

このシリーズが描くのは、まさに、現実世界です。
そして、そこにデジモンが現れ、現代の「選ばれたのではない」、自らデジモンを求めた子どもの“アドベンチャー”を繰り広げるのです。

<補記>
■このメタ的な設定が効力を発揮する(当然、ある種の違和感も伴う)のは、1クール目、かつその中盤までくらいであろうと想定しています。
デジモンが現実に介入してくるという事が認知された段階で、シリーズの向かうところは1,02と同じく、普遍的な子どもたちの冒険譚となります。
しかし、その出発点が違うのです。
子どもたちに、より強くメッセージする。
主人公たちの“前向きさ”を、より親近感を持って受け止めて貰う為に、この設定を用います。

■また、前シリーズまでの細かい約束事は一旦破棄する事で、03独自のフォーマッティングが行えるメリットも大きいと考えます。

■1,02のデジモン、キャラクターも、途中展開から介入させる事を考えています。認知されたキャラクターの再登場は、子どもには嬉しい事でしょうし、またこのシリーズ03が狙う、フィクション=ネットワーク(デジタルワールド)の現実への浸食・介入を最もインパクトを以て具現出来る手段だからです。


【描くべきこと】

●選ぶのは子どもだ
03の主人公は、自らの意志でデジモンを現実化し、自らの意志で冒険に飛び込んでいきます。
与えられるものを享受するばかりの、現実の子どもに、フィクションが提示し得る最も重要な事柄だと考えます。

●デジモンという存在の特異性
当たり前の様に、アニメ内キャラクターのすぐ側にいる、変わった生き物――。
03では、デジモンがデジタル・モンスターであるという、最も特異な出自を再検討したいと考えます。
まず、主人公と、そのパートナーとなるデジモンの交流。
シリーズ序盤では、そこをしっかり描きたい。
媚びた可愛さではない、デジモンのモンスター性。人が全てを理解出来る存在である筈がない。
そのディスコミュニケーションから、本当の“友だち”に昇華するまでには、主人公は安穏としていられません。
どう積極的に行動するのか。そこを見つめていきたい。

●アドベンチャー=バトルか
当然、アクションシリーズなのですから、これまでのデジモンが描いてきた様な、デジモン同士の、手に汗を握る激しいバトルというのは不可欠な見せ場です。
しかし、本来アドベンチャーとは、「悪い敵と闘う」事ばかりではない筈です。
現時点で提案を受けている4聖獣幹部などの敵構造は、少なくとも2クール目までは表面化させない様にします。
敵を明快に設定する事で、シリーズの“目的”は、単にそれと闘う事ばかりに集約され、本来の“冒険”という要素がおざなりになってしまうからです。
勿論、敵と闘うというのが、一番簡単な盛り上げ方です。しかし、そこに甘んじていては、“アドベンチャー”という表題が泣くのではないでしょうか。
知恵を振り絞ってでも、現代の少年・少女の“冒険”を描きたい。

●スタート時は、群像劇ではない
これもラジカルな改革案となります。
ベーシックには、レギュラーの少年・少女は三人を想定しますが、これとて固定にはしません。
シリーズ序盤は、啓人(タカト)という男の子、そしてそのパートナー・デジモンに焦点を絞り、彼が住んでいる環境、そしてデジタル・ワールドの在り方という“状況”を丹念に見せていきます。
途中でレギュラー的な存在が加わりますが、第三シーズン目辺りでは、これまでのシリーズの様に、ユニット<グループ>にまで拡大してもいいのではないか、と考えます。

●代理戦争ではない戦い――完成体での一体化
戦いのクライマックス、これまでのシリーズでは、子どもはデジモンに“力”を与え、進化させるところまででその役割を終え、後は戦いはデジモン同士のものとなり、子どもは応援するリアクションを描くのみでした。
■このシリーズの、ヒーローサイドのデジモンが完全体になるには、子どもデジモンの内部に一体化されねばならない。
――という設定を加えたいと考えます。
敵から攻撃を受ければ共に傷つき、激しい気持ちはそのままデジモンとしての攻撃パワーへと直結する。アニメーション/ドラマのエモーションの描き方としては、むしろこの方がずっと自然ではないか。


★【キャラクター】
(名前はいずれも仮)

■松田“タカト”啓人(10)

【家庭環境】
▼ 西新宿、高層ビル街の裏手、ちょっと懐かしい路地に住む、都会の子ども。
▼ 自宅は自家製パン屋。
 ▼洒落た店ではなく、駄菓子なども売っている小さな商店。ただ、パンづくりだけは内製に拘っている職人肌の両親。
 ▼パン、というところでギルモンの食性をモチーフにした挿話も作れる。

【性格】
 親、教師、大人から見ると、「良い子」に見えているタイプ。
 友達との関係も普通に出来ているし、朗らかで、よく笑う。
 しかし、多感さからくる不安定な面を時に見せる。
 
▼ デジモンが大好きで、カードもいっぱい集めているだけでなく、自分でノートに、自分が考えたデジモンを描いたりする(少し、他の子どもと違う愛し方)。
▼ 性格は、内向的とまではいかないが、親や先生に刃向かう事は絶対にしないし、積極的に自分から友だちを作るタイプでもない。人が争っているのを見るのが嫌い。といった意味での、ナイーヴさ。
▼ 基本的には「いい子」、だが常にモラリスティックではない。この方が楽だ、といったら、そちらに流れる時がある。
▼そういった甘え、自立性のなさ――、それらが彼を子どもらしく描く。そして、そこから成長する事が、彼の、人としての、“進化”。
▼「戦い」というものは、当初はタカトにとって最高のエキサイティングな“ゲーム”。しかし、本当の「戦い」がゲームなどではないことを、ギルモンと共に傷つき、進化しながら体験していくのが、このシリーズ最大の眼目。


★ギルモン/タカトのパートナー・デジモン
★デザインを踏まえ、より本能的な、プリミティヴな“モンスター”として描きたい。
デジモンたる所以である、デジタル性の付加を要検討。
前述の通り、元々はネイティヴなデジモンであり、リアル化したからとてそれは変わらない。つまり、行動は人間の理解を超えたもので、手のつけられない暴れん坊。
▼ただし、ギルモンはタカトが夢想したデジモンの絵が実体化したもの。


■李“リーくん”健良(10)
第二の“デジモンテイマー”
プログラマの父親が、<香港>(大陸から変更)から移住し、東京で日本人の女性と結婚し、生まれたのが健良。
両親ともに働いている。(母親もグラフィック・アーティスト)。
外見も言葉も普通の日本人と変わりはないが、タカトと共に冒険をしていく中で、何を最も大事にしているのかといった「価値観の相違」が明らかになる。
人はみな同じ――なのではなく、それぞれ自分とは違う人を、そしてデジモン達を尊重する事を、二人は学んでいくだろう。

【家庭環境】
タカトの家近くに立つマンションに、家族5人で暮らす。姉、幼い妹がいる。
広東語を話す場面は、殆どないだろうと思われるが、もし父親と激しく対立する場面があるなら、そこで避けるのは不自然であろう(シリーズ中一回くらい)。

【性格】
大柄で、タカトより二つくらい年上に見えるが、精神的にもそれくらい成長している。
兄妹がいることもあり、他者と、いかにトラブルを起こさずに付き合っていくかを、無意識にいつも留意している。その意味では、すぐに「友達」として心を開かない。
しかし、温厚な性格、物怖じしない性格であり、勿論タカトのレベルでは、充分すぐに「友達」になってしまう。
両親の影響、そして本人の資質もあって、普通の子どもよりはネット端末やプログラムに親しみ、使いこなしているが、“天才的なハッカー”などではない。ただ、判らない事があった時など、的確にネットから情報を抽出するといった事には長けている(という意味で、描写的にはハッカー的なところもあるだろう)。
彼の内面的性格は、テリアモンとの関係性で一番表現される筈である。


★テリアモン/リュウのパートナー・デジモン
基本的には劇場の“グミモン”をそのまま踏襲します。
●テリアモン/リュウのパートナー・デジモン
基本的には劇場の“グミモン”をそのまま踏襲。可愛い顔しているが、パワーは強大である――というイメージを強く打ち出す。

▼くちぐせは「モーマンタイ」(広東語で「問題ないよ」"Take it easy.")
 =>リーが何度かテリアモンと二人の時に話した言葉を面白がって使っている。
▼リーは、テリアモンを「戦う為の存在」ではないと言い聞かせて育ててきた。テリアモン の素直さ、良い子さはリュウの気持ちが真摯であったが故のもの。
▼しかし――、そのテリアモンもデジモンには変わりがないという厳然たる事実に直面。



■牧野“ルキ”留姫(10)
第三の“デジモンテイマー”。
タカトとは違う学区の少女。クールで最も好戦的な美少女。
当初彼女は、タカトとギルモン、そしてリーとテリアモンに攻撃を仕掛けてくる“敵”として現れる。彼女の背景などは当初は明らかにしない。
彼女の内面は徐々に、タカトの真摯な接してくる態度、リーの言葉、そしてクルルモンの存在が暴く「彼女の女の子の側面」により、第一クール内には「テイマーズ」チームの一人となるにまで持っていく。

【家庭環境】
彼女の母親は、27歳で、極めて若々しく、周囲の男からの羨望の的。ルキを、子どもではなく友だちの様に扱いたがっており、それがルキにとっては嫌でたまらない。フェミニンな母親の外観イメージに反抗したスタイリングが、ルキのファッション。

★【特記】
ルキは、男勝りな攻撃的デジモンテイマーであるが、決して言葉遣いが乱暴であったり、彼女自身の立ち振る舞いが粗雑な少女ではない。あくまで神秘性を持った少女である。
登場時は、謎めいた妖しいイメージを出すが、タカト、リーとうち解けていく内に、本来の、10歳の少女らしさが露見していく。その落差に留意して描写したい。


●ルナモン/ルキのパートナー・デジモン
▼極めて俊敏。容赦の無い戦い方――、それはルキがそう望んだから。
▼ルキに極めて忠実。
▼しかし、すこし成長したギルモンやテリアモンとの触れあいの中で、自分とは何なのかという疑問を抱き始める。
▼ルナモンは、徹底的に“戦いに特化されたデジモン”である。
▼ルキは、決して冷酷ではないが、デジモン・バトルでは容赦の無い戦いの女王。
 ▼戦い、相手を倒す事でしか、自分を表現出来ないと思いこんでいる。



●クルルモン/はぐれデジモン
パートナーを持たないリアル・デジモン。
露出は第一回目からさせ、四話辺りにて、「パートナーのいないリアル・デジモン」という存在である事をはっきり描く(進化をしないという事も言葉として出す)。

人なつっこいが、人と変な距離をとろうとする。気まぐれ。すぐにいなくなる。
ルキにだけは、妙に接近してくる。ルキの自分が押し隠した“女の子”を否応なく引き出す。
★【特記】
本能的に、クルルモンは自分がどういう存在であるかを判っているのかもしれない。
だから人や他のデジモンに抱かれたりするのを嫌がり、距離をもちながら、しかししきりに話しかけてきたりする。可愛らしさの表現として、「愛玩」される存在にはしない。


▼クルルモンは、デジモンを強いレヴェルで一気に進化を促す触媒的ポテンシャルを秘めたデジモン。極めて特殊な“ソフトウエア・アクセラレータ”であり、他のデジモンとは成り立ちそのものが違っている、のだろう。
この子は、生まれた時から、ある程度人の生活――リアル・ワールドの世界、言葉、あるいは習慣を無意識に認識していた(だからといって、それらにすぐに順応する訳ではないが)。
パートナーとなる子どもがいなくても、一人で楽しい事を探し回っていられる。

▼原案にある通り、クルモンはデータとして取り込まれると、とてつもないポテンシャルとなって、その取り込んだデジモンをクラスレスな進化を遂げさせる――事が判ってくる。
クルモンがパートナーを持とうとしないのは、そういった自分の存在を、無意識に認知しているからではないだろうか(ま、裏設定です)。
シリーズ中盤は、このクルモンを狙って襲い来る四聖獣たちと、タカト、ギルモンたちの攻防がクライマックスとなる。

※第三シリーズ前半を“デジタルワールド冒険編”とするなら、このクルモンが奪われてしまい、救いに行く為にタカトたちが自らをデータ化し、デジタル世界へ飛び込んでいくという事になるだろう。


●インプモン
ワルガキ・イメージのトリックスター・デジモン。
ギルモンやテリアモン、ルナモンを、「人に使われる情けないデジモン」と蔑み、嘲笑う。
※しかし、彼が人に近しい自我を得ているのは何故かを考えれば、自ずとその後の展開、彼の背景を暗示する)。
特にクルルモンには、デジモンらしさのかけらも無い者(戦えない存在)として、ひどく忌み嫌う。
1クール目では、フラっと現れては、デジタルワールドの現実世界の浸食を予言したり、あるいは戦いを暗示したりする存在。
▼インプモンが超進化し、最強の敵となり、最終的には、ギルモンと共に闘う仲間となる展開となる。

■<名称未設定>インプモンのパートナーとなる子ども
インプモン登場後、かなりの間その存在は伏せる。
意外な子どもが実はパートナーであったという驚きを狙う。
インプモンがクルルモンの謎を知った時以降、インプモンは言わば最初に、人間のパートナーを自ら捨てるデジモンとなる。
子どもは、非常に幼い子、がいいかもしれない。「闘うデジタルデータ」であるデジモンに対し、リーとは違い、無自覚に全くそうではない者として接してきた。インプモンは、故に早期から自己の存在の矛盾に悩み、そしてひねくれた態度をとる存在へと“進化”してしまった。


■リョウ<ワンダースワン・ゲームのキャラクター>
子どもたちに認知度の高いキャラクターなので、「凄腕のデジモンテイマー」として、中盤以降に、数回連続のゲスト・キャラクターとして登場させる。

▼ゲームと違い、TVシリーズとしてのリョウのプライオリティを高める為に、彼固有のパートナー・デジモンを設定する必要がある。
このデジモンのパワー、強さ、ヒロイズムなどが、リョウをより魅力的に見せるだろう。

※それがサイバードラモンというのは……?

★【特記】
▼現時点でのアイデア
デジタル・ワールド浸食が始まった頃(半年くらい前)、九州に住んでいた一人の少年が行方不明になっていた。
それがリョウ。彼はタカトらがデジタル・ワールドに来るずっと以前から、自らの存在をデジタイズさせ、デジタル・ワールド内を彷徨していたのだった。
ある程度、その世界の事が判っており、タカトらを導く存在となる。
 =>デジタル・ワールド編の最後で、タカトらと共にリアル・ワールドに帰還、九州の自宅へ帰る。


<デジモン使い以外の子どもたち>

タカト、リュウの通う学校の生徒達がレギュラーで登場します。
彼らはデジモンが(テレビを見ている子どもたちと同様に)大好きです。
しかし、シリーズが進むにつれて、彼らの中にも、パートナー・デジモンを得る者が現れていきます。

※レギュラーのデジモン使いを絞るからといっても、登場デジモンが減る訳ではありません。

★ヒロキ
デジモン・カードの大名人。タカトの一番の仲良し。
豪快なゲームのプレイっぷり。
タカトがギルモンと一緒に戦う時のアクションは、ヒロキの真似から始まる。
最初に、リアル化したデジモンを受け入れる子。

★ミシオ
クラスメートの女の子。タカトが意識する“異性”。
タカトの家のパンを時々買いに来る。
親が水商売で、夜に家を空けるので、幼い妹の世話をする。学校からもすぐに帰ってしまう。

【デジタル・ワールド】

このシリーズに於けるデジタル・ワールドは、ネットワーク(一般的な意味での)と同義ではなく、ネットワークの向こう側にある世界。
しかし、そことの接触にはネットワークが常に介在しているのはこれまでのシリーズの通り。
ただ、もう少しネットワークの在り方を現実的にしたい。
玩具の企画にも合わせ、疑似ネットワークが、視聴する子どもたちと作品世界ともつながる様な効果が出れば理想的。


各種設定案

■時代設定
番組内では、描写は徹底的に2001年という現時制で描く。
ネットワークと実生活の関係、端末の在り方などは、現実から逸脱し過ぎない様に留意する。
その意図は、デジモンという非日常的存在をより魅惑的に描く為である。

とは言うものの、新デジヴァイス(カードスロット)の使い方は、人間側、デジモン双方のキャラクターが“進化”(成長)するにつれ、SF的ガジェットとしての使い方に移行していくであろう。

またデジタル・ワールドへ冒険に出る段階にては、ネットワークそのものを視覚的に面白く見せる意味では、“異次元”的なものになる。


■ブルーカードの出自
ネットワークが発達する以前に、ローカルなネットワーク内に生み出された人工知能(プログラムデータ)がデジモン。
世界各地の若いプログラマが面白がって、競ってデジモンを自己“進化”させようというプログラムを書いていた。
そのデータが書き込まれた“メディア”(媒介)が、ブルーカード。
子どもたちのデジヴァイスに刷り込める為の形。
あくまでブルーカードは、デジモン自己“進化”を促す媒介でしかなく、必ずしもそのデータを吸収したデジモンが進化する訳ではない。しかし、何らかのパワーを得るのは間違いない様だ。

※人間のキャラクターとして出すかどうかは未定。
 モデルとなる人物を挙げるなら、Linuxの創始者リヌース・トーヴァルト。


■ ネットワーク管理者
【設定案】
20世紀に誕生したインターネットは、21世紀に入り、より生活に密着した、無くてはならない“もう一つの世界”となっている。
 ネットワークを通して人は意志を伝えあい、その仮想の世界の中に自己を投影し、また自己のデータを預け置く。
 日本政府は、ネットワーク事故などの対策を講じるため、情報管理局を設置していた。しかし、自由たるべきネットワークに管理という概念は拒否反応を起こされる事を忌避し、またアメリカNSAのネット監視システム“エシュロン”、FBIのメール盗聴システム“カーニヴォー”(食肉獣)と近しいシステムを作り上げようとしている事もあり、この組織の存在は完全に秘匿されていた。
 情報管理局の、未だ開設途中のネット監視システム“ヒュプノス”は、ネットワーク内に、出所不明のパケット(データ)が走り回っている事に気づいていた。それらのデータはまるで不可解なルートをとりながら、いつの間にかネット内に現出し、増殖し、走り回っている――。

※ネットワークに異変が起こっている――というシチュエーションを、子どもの目線だけで描くのは無理がある。
勿論、問題と対決するのは主人公たち子どもだが、彼らがどれだけ大変な使命を背負っているのかを客観的に伝える為の“大人キャラクター”として、また、サスペンスを盛り上げる為の装置としてこの設定を導入する。
※人間のキャラクターは、少年ドラマシリーズに於ける石橋蓮司の様なイメージ。

※ヒュプノス・システムは、デジモンのリアライズ(現出)の突破口を奇しくも生んでしまっていた――という経緯を想定(検討中)。


■ デジタル・フィールド
現実世界に現れたデジモン、というものを魅力的に描こうというのが、シリーズ前半の眼目であるが、日常的な場所で、衆目の中でバトルをする訳にはいかない。
演出的なプランではあるが、デジタル・ワールドからリアル・ワールドへ突入してきたデジモンは、デジタル・ワールドそのものを引きずって現れる。これがデジタル・フィールドであり、それが存在するある範囲内の、現実の風景を歪ませた特殊なヴィジュアルの“場”を生み出す。
その中で起こっている事は、外からは靄がかってよく見えない。
※しかし、巨大なデジモンともなると、それは衆目の中に現れる事になろう。


■ ナレーションの扱いについて
冒頭のアバンタイトルにて、毎回20秒、前回までのおさらいをナレーションで補う。
喋りのスタイルは、前シリーズまでとはトーンも変え、煽り口調気味にテンションを上げたものにして、情報量を少しでも多く入れる。


■ 各話登場デジモンのデータ・名前の提示
闘っているデジモン(ギルモン、ルナモン、テリアモンら)のPOVに入って、その相手のデジモンのデータがスキャンされ、ワイプでデータ、テキストを突入させると同時に、各デジモンのテイマー(タカトら)のダイアローグで、名前、属性、成長段階を「看破」させる。

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